DESIGN IDEAS
別荘は、 使わない日のことまで設計する
杉本です。
久しぶりに別荘に着いて、荷物を下ろす。部屋をひと回りして、掃除をして、ようやく椅子に座る。帰る日には、また片付けと戸締まりが待っています。滞在が短いほど、その前後にかかる時間も気になりますね。
別荘の設計では、気持ちよく過ごす場面と一緒に、次に訪れるまでのことも考えます。使っていない日の建物の状態は、そこで過ごす休日にもつながっているからです。
着いてから、くつろぐまでを短くする
車には食材、着替え、子どもの遊び道具。荷物が多いと、駐車する場所から玄関までの少しの距離も、何度も往復することになります。雨の日の移動や、一度荷物を置く場所まで考えておくと、到着後の動きが整理できます。玄関から冷蔵庫へ食材を運ぶ。鞄は部屋の手前に置く。上着はすぐに掛ける。そうした動きを間取りに重ねながら、収納の位置を決めていきます。別荘に置いておくものと、毎回持ってくるものも分けて考えたいです。
亀岡の別荘リノベーション1では、来訪者に主な動線が分かりやすくなるよう整理しました。慣れた人だけが使いやすいのではなく、初めて訪れる人にも場所の関係が伝わることは、家族や友人と過ごす別荘でも大切だと思います。
湿気は、建物の状態から考える
窓を開ければ、湿気の問題がすべて解決するわけではありません。建物の周囲の水の流れ、雨が入る箇所、床下の状態、断熱や設備の使われ方。まずは、何が起きているのかを確かめる必要があります。
亀岡の別荘リノベーション2では、湿気に悩まされ、使う機会が減っていた建物の断熱と防水を見直しました。留守中の管理方法と合わせて、建物そのものに改善が必要な部分も見ておきたいところです。
新築でも改修でも、建物のつくりと留守中の運用をつなげておくことが必要です。どの設備を、どのように使うか。訪れる間隔や地域の気候を踏まえて整理し、操作する人にも分かる形にしておきたいところです。
手入れを続けられる形と素材にする
大きな窓から山が見えるのは気持ちのよいものです。その窓を、どこから拭けるかも確認しておきます。届かない場所の掃除が必要なら、誰が、どのように作業するかまで考えなければなりません。
外壁やテラスの素材も、完成時の色や質感に加えて、雨や日差しを受けた後の変化を見て選びます。塗り直しが必要な素材なら、その範囲や作業のしやすさを整理する。傷んだ部分を交換しやすい納まりにしておくことも、手入れの負担に関わります。
設備の点検口の前に、動かしにくい家具を置いてしまわないか。落ち葉がたまる場所を掃除できるか。普段は目に入らないところほど、設計中に作業する人の動きを想像しておきたいと思います。
帰る日の片付けを、間取りに入れる
日曜の夕方、出発前に部屋を行ったり来たりする。忘れ物が気になって、もう一度見て回る。そうした負担を減らすために、洗濯物をまとめる場所や、掃除道具の収納、外の家具の片付け先を決めておきます。自分たちで行うことと、管理を頼むことも整理します。清掃や点検をお願いする場合には、道具や設備の場所、気になる箇所を共有できると、引き継ぎがしやすくなります。建物の使い方が、一人の記憶だけに頼らないようにしたいですね。
遠隔で確認できる設備も選択肢ですが、何を把握できて、異常があったら誰が現地で対応するかは別に考える必要があります。仕組みを増やす前に、続けられる管理の方法を決めておくことが大切です。
次に来たときにも、自然にいつもの席へ座れる。そのための準備や手入れまで見通しておくことで、別荘へ向かう気持ちも軽くなると思います。過ごす時間と、そのあいだの時間をつなげて設計していきます。