本文へスキップ
DESIGN IDEAS

実家を、二世帯住宅に。 リノベーションで残すもの、変えるもの

杉本です。 実家には使っていない部屋がある。親も子も、これからの暮らしを考え始めている。それなら、今の家を二世帯住宅にできないだろうか。住み慣れた土地で一緒に暮らすことには、新しく場所を探すのとは違う安心感があります。 ただ、空いた部屋に台所を足せば、それで二つの暮らしが整うとは限りません。今ある家のよさを読み取りながら、毎日の出入りや、光の入り方まで考え直していきます。 広さだけでなく、建物のつくりを調べる 最初に見たいのは、今の家に何部屋あるかだけではありません。柱や壁がどこにあり、床や屋根がどのように支えられているか。雨漏りや傷みはないか。図面と現地を照らし合わせ、改修の前提を確かめます。 広い部屋でも、構造上大切な壁を自由に取り払えるとは限りません。新しく台所や浴室をつくる場合には、給排水の経路や床下の余裕も関わります。見えている仕上げの奥に、間取りを決める条件があるのです。 どこを残せそうで、どこに補強や更新が必要か。解体して初めて分かる部分も含め、調査の結果を整理します。使える面積を先に配り切らず、建物の状態と一緒に計画を進めたいところです。 残したい庭と、変えたい明るさ 古い家を見ていると、建物だけでなく、長く育った木や、玄関までの歩き方にも、その場所らしさを感じます。二世帯化を機にすべて新しくする前に、家族が好きだった風景を聞いておきたいと思います。 あけぼのリノベーションは、元料亭を二世帯住宅に変えた実作です。趣のある庭とアプローチを生かし、二世帯の距離感を整えることが求められました。一方で、南からの光が届きにくかった建物には、耐震補強を含む大きな改修を行っています。 残すことと、住みやすく変えることは、一緒に考えられます。庭に面していても、普段過ごす部屋から見えなければ、庭との関係は薄いままです。居間の位置や開口を見直すことで、受け継いだ庭が日常の近くに戻ってくることもあります。 写真に残したい姿と、毎日使うときの心地よさ。その両方を確かめながら、手を入れる範囲を決めていきます。
二つの暮らしが、無理なく出入りできるか 親世帯と子世帯の場所が決まったら、玄関からそれぞれの居場所まで歩く様子を考えます。夜遅く帰る人が、もう休んでいる人の部屋の前を通る。友人を招くたびに、別の世帯の居間を横切る。部屋は足りていても、出入りで気を使う間取りは避けたいですね。 岸和田のリノベーションでは、既存の大きな家を、一階は親世帯、二階は子世帯として改修しました。二階ではバルコニーを広げ、玄関アプローチとテラスの役割を持たせています。 今ある玄関や階段を、そのまま使うことだけが答えではありません。外とのつながりを見直すことが、各世帯の暮らしを整える手がかりになります。ただし、新たな出入口や外階段を設けられるかは、敷地や建物の条件を確認して判断します。 完成までの暮らしも、計画に入れる 実家の改修では、工事中にどこで暮らすかも大切です。住みながら進めたい場合も、台所や浴室が使えない期間、工事の音やほこり、作業する人の出入りを考える必要があります。二回に分ければ必ず住み続けられる、というものではありません。 岸和田では、親世帯の生活を一階で整える工事と、二階の子世帯のLDKを改修する工事を、段階を分けて進めました。工事の分け方にも、それぞれの建物と家族に合う方法があります。 先に直すべき建物の傷み、二世帯で暮らすために必要な設備、残したい庭や素材。優先順位を整理し、追加の工事に備える余地も含めて予算と工程を考えます。最初から完成までの道筋が見えていると、家族で判断しやすくなります。 実家を二世帯住宅にすることは、部屋を分けると同時に、その家との付き合い方を考え直すことでもあります。シンクスタジオでは、建物に残る価値と、これからの家族の生活を見ながら、住み継ぐための改修を考えています。