DESIGN IDEAS
三世代・四世代で暮らす家。 家族の変化を、間取りに織り込む
杉本です。
三世代や四世代で住まいを考えると、ご家族の年齢にも、過ごし方にも大きな幅があります。学校へ通う人、家で仕事をする人、日中の多くを家で過ごす人。同じ家でも、一日の時間割はそれぞれ違います。
そして、その暮らしは少しずつ変わっていきます。完成したときに使いやすいことと、数年後に使い方を見直せること。その両方を考えておきたいです。
世代の数と、暮らしの単位は違う
三世代なら三世帯、というわけではありません。世代は祖父母・親・子などの関係を表し、住まいを考えるときの世帯は、食事や家事などの生活をどこまで一緒にするかに関わります。
祖父母、親、子が一つの台所で暮らす家もあれば、親世帯と、子どもを含む子世帯に分かれる家もあります。まずは人数や呼び名だけで部屋を分けず、今の生活のまとまりを確認します。
そのうえで、集まりたい時間と、一人で過ごしたい時間を聞いていきます。毎日の食事は別でも、週末には一緒に食卓を囲みたい。そうした具体的な場面から、共有する場所の大きさや位置が見えてきます。
年齢だけで暮らし方を決めつけず、それぞれの希望を聞くことも大切です。親世帯だから家にいる、若い世帯だからにぎやかに過ごす、とは限りません。
部屋の名前を、固定しすぎない
子どもが独立したあとの部屋を、仕事や趣味に使う。来客用の部屋を、将来は寝室として使う。今の使い方に加えて、別の使い方も考えておくと、間取りを検討する視点が増えます。
大切なのは、部屋の名前を変えるだけで使えるかどうかです。机やベッドを置ける壁があるか。収納が邪魔にならないか。夜に使う場合、トイレまで相手の居間を通らずに行けるか。家具と出入りまで描いて確かめます。
後から仕切るつもりの広い部屋も、窓や出入口、照明の位置が片側に偏っていると、使い分けが難しくなります。柱や壁の役割も確認しながら、変えられる部分と、動かしにくい部分を整理しておきます。
将来、生活のまとまりを分ける可能性があるなら、設備を追加できる場所や配管の経路も検討します。壁を一枚つくれば独立して暮らせる、というほど単純ではないためです。
手助けの仕方が変わっても、暮らしやすく
今は互いに独立して暮らせていても、家事を手伝う機会が増えたり、家の中の移動を少なくしたくなったりすることがあります。そのとき、部屋を交換することで対応できるかも考えたいところです。
寝室とトイレ、洗面、食事をする場所の関係。玄関からの距離や段差。誰かが手助けするときの立ち位置まで見ておくと、単に部屋が近いだけでは分からないことが見えてきます。
岸和田のリノベーションでは、大きな家を親世帯と子世帯が暮らす二世帯住宅へ改修しました。先に、親世帯が一階だけでバリアフリーに生活できるよう整え、その後、二階に子世帯のLDKを設けています。
これは二世帯住宅の実例ですが、生活のまとまりを見直し、段階を分けて住まいを整える考え方は、多世代の家にも参考になります。手助けを受ける人も、自分でできることを続けやすい配置にしたいです。
また、外から手伝いに来てもらう場合には、玄関からどこを通るかも変わります。他の家族の私的な場所を横切らず、必要な部屋へ出入りできるか。支える人の動きも重ねて見ていきます。
先を決め切らず、使い方を選べる余白を
将来の暮らしを、今すべて決めることはできません。家族が増えるかもしれませんし、別の場所で暮らす人が出てくるかもしれません。いくつかの変化を想像して、対応しやすい構成を探します。
例えば、共有の廊下から入れる部屋なら、使う人が変わっても他の家族の個室を通らずに済みます。窓辺の小さな場所に机を置ければ、新しい部屋を増やさず、仕事をする居場所をつくれることもあります。
必要か分からない部屋や設備を、最初からすべて用意する必要はありません。今の暮らしを窮屈にせず、何を残しておけば次に使い替えやすいか。広さだけでなく、出入口や窓、家具の置き方にも余白を持たせたいと思います。
住み継ぐ家は、同じ間取りを変えずに使う家とは限りません。家族の変化に合わせて、居場所や関わり方を少しずつ調整できること。今のご家族の話を聞きながら、その先の使い方も一緒に描いていきます。