DESIGN IDEAS
平屋の天井は、どこを高くする? 屋根から考える居場所
杉本です。
平屋を考えるとき、天井を高くして、のびのびとしたリビングにしたいという希望があると思います。屋根の下に一つの階で暮らす平屋では、天井のつくり方が、室内の印象に大きく関わります。
ただ、家じゅうを同じように高くするかどうかは、少し立ち止まって考えたいところです。食卓を囲む場所、本を読む窓辺、眠る部屋。それぞれの過ごし方を思い浮かべながら、高さを決めていきます。
高いところと、落ち着くところ
家族が集まる居間には、上へ広がる気持ちよさが似合うかもしれません。一方で、ソファの端に座って本を読むときには、天井が少し近い方が、落ち着いて感じられることもあります。
同じ部屋の中でも、天井の高さを変えることで、壁で仕切らずに居場所の違いをつくれます。広いリビングの一角に、少し包まれるような場所がある。家族が一緒にいながら、それぞれの時間を過ごすきっかけにもなります。
高さを決めるときには、部屋の広さや家具との釣り合いも見ます。狭い場所をただ高くすると、縦に細長い印象になることもありますし、大きなテーブルの上は、天井と照明の位置によって集まりやすさが変わります。
平面図には、椅子やソファまで置いて考えます。立って歩くときと、そこに座ったとき。両方の目線で見てみると、その場所に欲しい高さが少しずつ見えてきます。
家族全員が、同じ場所を心地よく感じるとは限りません。食卓で過ごすことが多い人も、庭に近い椅子を選ぶ人もいます。高さに違いがあると、そうした好みに合う場所を家の中に見つけやすくなります。
屋根と天井を、一緒に考える
平屋では、屋根の形と室内の高さを合わせて考えやすいところがあります。屋根の勾配に沿って天井を上げる方法もあれば、外の屋根とは別に、室内側を水平に整える方法もあります。どちらがよいかは、そこでつくりたい場所によって変わります。
天井を上げる部分では、梁や屋根を支える構造がどう見えるかも大切です。木の架構を見せたいのか、すっきりした面として見せたいのか。仕上げの選び方まで含めて、部屋全体の印象を考えます。
また、屋根の下には、断熱や空調、配線などのための場所も必要です。先に天井の形だけを決めてしまうと、あとから設備の出っ張りが気になることもあります。窓の位置や照明とともに、早い段階から図面に重ねていきたいです。
外観では落ち着いた高さに抑えながら、室内の必要なところに広がりをつくれるか。家の外と中を行き来しながら、屋根のかたちを探していきます。
高い位置に窓を設けるなら、そこから何が見え、どちらから光が入るのかも確かめます。天井に当たる光を取り入れるのか、遠くの緑や空を眺めるのか。窓と天井を別々に決めず、ひとつの空間として見ていきます。
低い軒の向こうへ、視線を伸ばす
開放感は、頭の上の高さだけで決まるものでもありません。室内から庭へと視線が続き、窓の向こうに座れる場所が見えると、部屋の広がりを横方向にも感じられます。
上芳養のコートハウスでは、雨風を考慮し、水平に伸びる庇を設けました。対岸の道路からの視線に配慮して石塀をつくり、LDKの南側には縁側を置いています。室内と庭のあいだに、軒の下で過ごせる場所をつくった住まいです。
一般に軒を低く、深くすると、窓から見える空の範囲や、光の入り方も変わります。落ち着いた陰影ができる一方で、室内にどのような明るさが欲しいかは、別に確かめておく必要があります。
窓辺に座ったとき、軒先の向こうに何が見えるか。庭の木を眺めたいのか、その先の景色まで見渡したいのか。天井から軒へ、さらに庭へとつながる関係を考えると、高さの決め方にも理由が生まれます。
数字だけで決めず、断面と模型で確かめる
天井の高さは、数値だけでは感じをつかみにくいものです。同じ高さでも、窓の大きさや部屋の奥行き、天井の色によって印象が変わります。
そのため、平面図に加えて、建物を縦に切った断面や模型で確かめます。入口から居間に入ったときに、どこで空間が広がるか。椅子に座ると、窓の上端や軒先がどのあたりに見えるか。小さな違いを比べながら検討します。
夜の居場所も考えておきたいですね。天井面を明るく見せるのか、食卓や手元を照らすのか。昼間の窓の光とは違う見え方を想像すると、照明の置き方と天井の関係も整理しやすくなります。
模型では、屋根を外して部屋の並びを見るだけでなく、窓の高さから中をのぞいてみます。図面の数字を、そこで過ごす感覚に近づけるための検討です。
シンクスタジオでは、高さをそろえる前に、それぞれの場所でどう過ごすかを考えます。上へ広がる居間も、低い軒の下の縁側も、その家で気に入って座れる場所になればと思っています。