DESIGN IDEAS
二世帯住宅と庭の、ほどよい関係 一緒に過ごす時間と、一人の時間
杉本です。
二つの世帯が近くに暮らす。困ったときには声を掛けられるけれど、それぞれの生活には踏み込みすぎない。二世帯住宅では、そんな距離をどうつくるかが大切です。
同じ部屋に集まる以外にも、家族とのつながり方はあります。庭に出たときに顔を合わせる。それぞれの窓辺から、同じ木を眺める。庭との関係から考えると、一緒に暮らす姿も少し違って見えてきます。
同じ庭を、それぞれの場所から
二世帯の住まいを廊下や扉でつなぐと、そこを通って相手の家に入る関係になります。庭には、行き来とは別に、同じ外の景色を眺めるというつながりもあります。
片方では食事をしていて、もう片方では本を読んでいる。過ごし方が違っていても、同じ木の葉や、雨の降る様子が目に入る。わざわざ集まらなくても、家族で共有できるものがあるのはいいですね。
ただ、すべての部屋を庭へ向ける必要はありません。家族の気配を感じたい居間と、静かに休みたい寝室では、外との関係も変えて考えます。誰がどこに座り、何を眺めるかから、庭の位置を探していきます。
例えば、中庭を挟んで部屋を配置する方法もあります。ただ、庭のために室内の行き来が長くなると、日々の暮らしには負担になることもあります。庭の広さと部屋の配置、必要な移動の距離を合わせて考えたいです。
気配が分かることと、見えすぎること
庭があるからといって、いつも開放的に過ごせるとは限りません。道路や隣家だけでなく、同じ家族の窓が庭越しに正面を向いていると、落ち着いて座れないこともあります。
窓の位置を少しずらす。座る向きを変える。壁の一部を残し、木を眺める方向へ開く。同じ庭に面していても、室内が一直線に見通せる配置を避ける方法はいくつかあります。
木を植えればすべて隠せる、とは考えません。成長や落葉によって見え方は変わりますし、夜は室内の明かりで昼間よりよく見えることもあります。平面図に加えて、座った目線や上下階からの見下ろしも確かめたいところです。
家族の姿がよく見えることを安心と感じる人もいれば、少し距離がある方が落ち着く人もいます。どちらかに合わせてもらう前に、各自が気になる場面を聞いておきたいです。
会いに行く道と、毎日の出入り
庭を介して行き来できるのは楽しいものです。ただし、庭を横切らないと相手の家へ行けない計画では、雨の日や荷物がある日に使いにくくなることもあります。
天気のよい日は外を通り、雨の日は屋根のある経路を使えるか。各世帯が帰宅するときに、相手の居間のすぐ前を通らずに済むか。交流するための道と、自分の生活に必要な道を重ねて検討します。
あけぼのリノベーションは、元の料亭をご兄妹が上下階で暮らす二世帯住宅へ改修した実例です。既存の庭やアプローチを受け継ぐことと、二世帯の付かず離れずの距離感が、計画の大切な要望でした。
庭を残すときにも、眺めだけでなく、誰がどこを通って暮らすかを考える。以前からある外部空間が、これからの家族の関係を考える手がかりにもなります。
写真のダイニングでは、大きな窓に沿って食卓が置かれています。建物の使い方が変わっても、外とのつながりを毎日の居場所に残す。その関係も、住まいを考える手がかりになります。
一緒に使える庭と、それぞれの窓辺
庭で一緒に食事をする日もあれば、一人で少し外に出たい日もあります。大きなテーブルを置く場所だけでなく、軒下の端に腰掛けられるところがあると、使い方に幅が生まれます。
一つの庭を共有する場合は、植栽の手入れや水やり、洗濯物を干す場所も話しておきたいです。きれいな庭をつくることと、その庭を無理なく使い続けられることは、合わせて考える必要があります。
庭越しに声を掛けることも、自分の窓辺で静かに過ごすこともできる。いつでも交流しなければならない場所にせず、それぞれが外との関わり方を選べるようにしたいと思っています。
全員で同じ庭を使うのか、各世帯に小さなテラスを設けるのかも、一つの選択です。敷地の広さだけで決めず、どんな時間を外で過ごしたいかを聞きながら、使い分けを考えます。
二世帯住宅の庭は、建物のまわりを飾るだけのものではありません。家族が近くに暮らしながら、気を張らずに過ごせる距離を、窓や庭、出入りの関係から考えていきます。