DESIGN IDEAS
石・木・左官。 素材の魅力を引き出す、住宅の細部
杉本です。
床には石を、天井には木を。壁は左官で仕上げたい。住まいを考え始めると、使ってみたい素材がいくつも浮かんでくると思います。
その一つひとつを、どの場所に、どれくらいの広さで使うか。隣り合う素材をどうつなぎ、どの方向から光を当てるか。同じ素材でも、そうした組み合わせによって空間の表情は変わります。
今回は、石・木・左官を手がかりに、素材を住まいの中で生かすための設計についてお話しします。
素材は、色の組み合わせからもう一歩先へ
石を選ぶときは、色に加えて柄の大きさや流れ、表面の仕上げも見ていきます。小さなサンプルでは穏やかに見えても、壁一面に並べると印象が強くなることがあります。使う面積と、一枚ごとの違いを合わせて考えたいところです。
木も、樹種だけで表情が決まるわけではありません。木目の向き、板の幅、節の見え方、塗装の色と艶。それらを、床や天井の長さ、窓の位置と重ねて考えます。木目の方向が変わるだけでも、視線の向かう先は変わって見えます。
左官の壁では、塗り方による凹凸と光の関係を確かめます。正面から均等に照らすと目立たなかった表情が、窓から斜めに光が入ると見えてくる。目指す表情を共有するには、色番号に加えて、実際に塗った見本を確認することが大切です。
石やタイルの目地も、色と幅によって見え方が変わります。目地の線を感じさせるのか、面として穏やかに見せるのか。家具や窓との位置関係まで含めて、素材の並び方を図面に落とし込んでいきます。
同じ素材を、どこまで続けるか
素材には、空間をつなぐ役割もあります。室内の天井から軒裏へ木の表情が続くと、窓のところで視線が止まりにくくなり、屋外まで一つのまとまりとして感じられます。
海老江の家では、軒裏のレッドシダー仕上げを建物の内部まで続けています。木の面と、その隣にある明るい面や暗い面との関係を見ると、素材が部屋の輪郭をつくっていることが分かります。
一方、上芳養のコートハウスでは、焼杉板と石の素材感を外観に取り入れ、周囲の自然との馴染み方を考えています。室内から眺める庭の石塀も、住まいの印象をつくる大切な部分です。
素材を決めるときには、その面だけを取り出さず、少し離れた場所からどう見えるかも確かめます。建物の内外を行き来する視線を考えると、組み合わせの判断が変わってくることがあります。
素材が出会うところを、丁寧に整える
床と壁、壁と窓、木と石。仕上げが切り替わる部分には、素材それぞれの厚みや施工の条件が集まります。ここをどのように整えるかが、完成したときの印象に関わります。
例えば、石やタイルの端に細い切れ端が残らないように割り付ける。木の板の向きと、開口部の線の関係を確認する。異なる素材の境目を揃えるのか、少し離して影をつくるのか。図面で考え、現場でも確かめたい部分です。
新庄のスクエアコートハウスでは、浴室からバスコートへ開く折れ戸を、壁いっぱいに納める計画としました。そのために、防水やタイル、外壁の厚み、施工時の誤差を考慮し、現場で打合せを重ねてサッシの寸法を決めています。
仕上がると自然に見えるところほど、その手前でいろいろな検討があります。こうした細部を整えて、素材の表情や窓の向こうの景色がすっと目に入るようにしたいと思っています。
サンプルを並べ、暮らしの中で確かめる
材料の見本は、できるだけ隣に使う素材と並べて確認します。床に使うものは水平に、壁に使うものは立てて見る。同じ照明の下でも、置き方で見え方は違います。昼の自然光と夜の照明、両方で考えておきたいですね。写真や画面で気に入ったものも、実物に触れながら確かめたいところです。
素材の強弱も、そこで調整します。表情のある石を主役にするなら、隣の壁や家具をどう合わせるか。木を広い範囲に使うなら、床や建具も含めて全体が重たく感じられないか。お気に入りの素材同士が、気持ちよく並ぶ関係を探します。
日々の扱いやすさも選ぶ基準になります。水がかかる場所、食べ物をこぼす場所、手で触れる場所では、素材や仕上げに応じた掃除の方法を確認します。将来の補修や、使ううちに変わる色艶をどう受け止めるかも、最初に話しておきたいことです。
小さな見本を見ているときから、完成した部屋でどのように過ごすかを思い浮かべる。そんな検討を積み重ねることで、素材の選択に一本の筋が通ってきます。
シンクスタジオでは、素材選びと空間の設計を一緒に進めています。好きな素材の魅力が、日々の光や手触りの中で感じられるように。組み合わせと細部まで、丁寧に考えていきたいと思っています。