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DESIGN IDEAS

門から玄関へ。住まいの第一印象をつくるアプローチ

杉本です。 帰宅して車を降り、庭の木を見ながら玄関へ向かう。軒下に入って鍵を取り出し、扉を開ける。家に帰るときには、いつも同じ短い道のりがあります。 来客にとっては、その家を初めて感じる場所。住む人にとっては、毎日、気持ちを切り替える場所です。住宅のアプローチは、建物の外観と暮らしをつなぐ、大切な空間だと思っています。 街から家へ、視線を少しずつ変える アプローチを考えるときは、まず道路に立って、敷地がどのように見えるかを確かめます。玄関の扉が正面にあるのか、少し奥まっているのか。扉が開いた瞬間、どこまで室内が見えるのか。入口の位置は、家の中の落ち着きにも関わります。 門を設ける場合は、敷地に入る位置と、玄関に入る位置を一緒に考えます。壁や植栽に沿って少し向きを変え、その先に玄関が見える。そうした配置には、道路からの視線を和らげ、入口までの景色をつくる働きがあります。 限られた距離でも、手前に一本の木があり、その奥に壁と軒が重なると、視線に奥行きが生まれます。歩いて近づくにつれ、木の向こうに扉が見えてくる。その順序を、平面図と目線の高さで考えていきます。 玄関の扉を開けた先に何を見せるかも、外からの流れの続きです。正面に庭が見えるのか、好きな絵が掛かった壁があるのか。外で見ていた景色と、家に入ったときの景色を重ねると、玄関の大きさ以外にも考えられることが増えてきます。 門の有無や塀の高さは、周囲の街並みや暮らし方によって変わります。訪ねてきた人が迷わず入れ、家族は室内で落ち着いて過ごせる。その両方が自然につながる配置を探したいところです。 車で帰る日も、歩いて迎える日も 外構の計画では、車を停めた状態を図面に入れて確かめます。ドアを開ける場所、荷物を取り出す側、玄関へ歩く経路。車が複数台ある場合は、普段の停め方で人の通り道が残るかも見ていきます。 雨の日に買い物袋を持って帰る。傘をたたみ、子どもと一緒に鍵を開ける。玄関前には、こうした動作を受け止める広さと、雨を避けられる場所が欲しいですね。庇の深さや柱の位置も、動きに重ねて検討します。 来客を迎える際には、どこで車を降り、どこで待ってもらうか。郵便や宅配を受け取る場所はどこか。表札、インターホン、ポストも、使う高さや手を伸ばす方向まで含めて整理しておくと、玄関まわりの見え方がすっきりします。 段差や勾配、足元の滑りにくさも、初めに確認することです。将来の使い方まで考えると、建物の床の高さを決める段階から、道路と玄関のあいだを検討しておく必要があります。
軒、壁、足元の素材をひと続きに考える 上芳養のコートハウスでは、雨風の多い地域性に配慮した水平に伸びる庇と、焼杉板や石の素材感が外観の特徴になっています。全景では大きな屋根の形が見え、近づくと外壁や石の表情が目に入ります。 玄関まわりの写真を見ると、軒下に並ぶ柱、外壁に付く照明やポスト、その先に続く縁側が、ひとつの視界に収まっています。庭の石塀も含めて、建物の周囲に連続した場所があることが分かります。 アプローチでは、遠くから見た全体と、近づいて触れる細部の両方が大切です。床の目地が扉に対してどう通るか。壁の端部をどう納めるか。手に触れる取っ手にどんな質感を選ぶか。素材を選ぶときには、その隣に来るものも一緒に見ます。 外で使う素材は、濡れたときの色や滑りやすさ、落ち葉の掃除も気になるところです。サンプルを屋外に出し、光の当たり方を変えて見ると、室内で選んだときとは違う表情に気づくことがあります。 外構を、建物と同じ時期に設計する 庭の広さ、玄関までの距離、車の位置は、建物をどこに置くかで大きく変わります。計画の初めから外構のための場所と予算を確保しておくと、玄関の向きや窓の位置まで含めて検討できます。 植栽は、数年後の枝の広がりも見込んで位置を決めます。育った木が玄関を覆いすぎないか、手入れのために近づけるか。完成した日の見え方と、その先の変化を一緒に考えます。 模型では建物だけでなく、塀、車、樹木も置いてみます。門の前から何が見え、軒下に入ると視界がどう変わるか。高さを持った形で見ることで、図面の線だけでは気づきにくい関係が分かります。 夜に帰宅することが多ければ、段差や鍵まわりの明るさに加え、光源が目に入らないかも考えます。庭を照らす光と玄関の明かりがどう見えるか。昼の外観と同じように、帰宅する時間帯の景色も設計しておきたいです。 私は、家に着いてから玄関に入るまでの短い時間にも、その家らしさが感じられるといいなと思っています。シンクスタジオでは、建物と庭、そこを歩く人の動きを一緒に考えながら、住まいの入口を整えていきます。